アドドットコムが広告・販促向け動画制作サービス「AI CM」の機能強化を発表しました。このアップデートにより、広告主は配信先やターゲット層ごとに異なる訴求ポイントを持つ動画を、従来の数分の一の時間とコストで量産できるようになります。静止画バナーから動画へのシフトが進む中、制作工数がボトルネックとなっていた課題の解決策として注目されます。
参考: 動画広告向けの生成AIサービス「AI COM」がアップデート(PR TIMES)
分析・見解
広告業界では現在、二つの相反する要求が同時に高まっています。一つは「より多くのクリエイティブバリエーションの必要性」、もう一つは「制作コストと納期の圧縮」です。従来であれば、この二つは両立困難でしたが、生成AIの登場により状況が一変しつつあります。
特に動画広告の領域では、この変化が顕著です。Meta、TikTok、YouTubeなどのプラットフォームはアルゴリズムで最適なクリエイティブを自動選別しますが、その前提として「複数パターンの素材投入」が必須となります。A/Bテストどころか、数十パターンのクリエイティブを同時に走らせ、機械学習で勝ちパターンを見つける手法が主流になっています。
しかし、従来の制作体制では1本の動画広告に数十万円、納期1-2週間が一般的でした。これを10パターン作れば数百万円、1ヶ月以上かかります。キャンペーン期間中に最適化が完了しない、というジレンマが生じていました。
AI CMのようなツールが解決するのは、まさにこの「量と速度」の課題です。同じ商品でも「価格訴求版」「品質訴求版」「使用シーン版」といった切り口の異なる動画を、台本入力から数分で生成できれば、マーケティング担当者は戦略立案とデータ分析により多くの時間を割けます。
また、見過ごされがちなのが「地域別・属性別カスタマイズ」の可能性です。例えば同じ商品でも、首都圏向けと地方向けでは刺さる訴求が異なります。従来は制作コストの都合で全国一律の素材を使わざるを得ませんでしたが、生成AIなら地域ごとの最適化も現実的になります。
ビジネスへの影響
広告代理店にとって、この変化は両面的な影響をもたらします。短期的には動画制作の単価下落が懸念されますが、中長期では新たな価値提供の機会が広がります。
実務レベルでは、制作実行の工数が削減される分、クリエイティブ戦略の立案やデータドリブンな改善サイクルの設計に注力できます。「どのような切り口で何パターン作るか」「どのセグメントにどの素材を配信するか」といった上流設計の重要性が増します。
また、生成AIツールを使いこなせる人材の確保が競争優位の源泉となります。プロンプト設計、ブランドガイドラインとの整合性チェック、法務リスク管理など、AIと人間の役割分担を適切に設計できる組織が勝ち残るでしょう。
広告主企業においては、内製化のハードルが下がる点に注目すべきです。従来は外注必須だった動画広告を、マーケティング部門が直接制作できる可能性が高まります。代理店との関係を「制作委託」から「戦略パートナー」へと再定義する好機と捉えるべきです。