ニュースの概要
Googleは、対話形式で検索できる「AI Mode」の広告表示を、オーストラリア、カナダ、インド、ケニア、マレーシア、ニュージーランド、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、シンガポールの10カ国へ広げると発表した。これまで広告の表示は一部の国にとどまっていた。米国ではさらに、利用者が最初の検索のあとに重ねる追加の質問にも広告を出す取り組みが進んでいる。広告主にとっては、一回きりの検索結果ではなく、数回のやり取りの流れ全体が広告の舞台になる。英語圏と新興国市場が同時に動き出した点も、今回の拡大の特徴である。
引用元: Google、AI Modeの広告を10カ国へ拡大(SEO Sherpa)
分析・見解
広告の単位が「検索語」から「会話の流れ」に変わる
従来の検索広告は、利用者が入力した一つの言葉に広告を結びつける仕組みだった。広告主はキーワードを選び、入札額を決めれば、あとは検索のたびに表示の機会を競えばよかった。
AI Modeでは、この前提が崩れる。利用者は最初に広い質問を投げ、次に条件を足し、さらに比較や絞り込みを重ねる。たとえば「出張向けのホテル」から始まり、「駅に近い」「朝食つき」「一泊1万円以下」と質問が深まっていく。広告は最後の質問だけでなく、会話の途中の文脈にも反応することになる。米国で進むフォローアップ質問への広告表示は、この流れを前提にした設計といえる。
10カ国という顔ぶれが示すGoogleの狙い
今回の対象国は、豪州、カナダ、ニュージーランド、シンガポールのような所得の高い英語圏と、インド、ナイジェリア、ケニア、パキスタン、フィリピン、マレーシアのように利用者数が急増する市場に分かれる。共通点は、英語での利用が広く浸透していることだ。
言語の壁が低い国から始めれば、広告の品質や表示の判断を、大きな修正なしに検証しやすい。同時に、インドやフィリピンのように人口が多い市場で会話型検索の習慣が根づけば、広告収入の伸びしろは大きい。検索広告で稼ぐGoogleにとって、AIによる回答画面を収益化できなければ、検索の変化はそのまま減収の不安につながる。広告の対象国を広げるのは、その不安に先手を打つ動きと読める。
広告が回答の一部に溶け込むことの両面性
会話型の画面では、広告が回答の文章に近い位置に置かれる。利用者が相談相手のように使うほど、広告は押しつけがましくなく、自然な提案として受け取られやすい。一方で、広告と回答の境目が見えにくくなれば、利用者の信頼を損なう危険もある。
過去にも似た例はある。検索結果の上部に広告枠が増えたとき、利用者が広告を見分けられなくなったとの批判が相次ぎ、表示の改善が繰り返された。会話型検索でも、同じ議論がより強い形で再燃するだろう。広告だと分かる表示と、回答の中立性をどう両立するかが、Googleの次の課題になる。
数字の公開が遅れる間、広告主は手探りになる
新しい広告面では、表示回数やクリック率の目安が出そろうまでに時間がかかる。従来の検索広告のような過去データがないため、入札額や予算の判断は手探りになりやすい。
ここで独自の視点を一つ挙げたい。会話型広告の成否は、広告文の出来よりも、広告主がサイトに置く情報の整い方で決まる可能性が高い。AIは広告主の商品ページや料金表を読み取り、利用者の細かな条件に合うかを判断する。価格や在庫、対応地域が曖昧なサイトは、そもそも候補に選ばれにくくなる。広告の腕を磨く前に、情報の土台を整えることが先である。
ビジネスへの影響
自社の商品情報を会話で答えられる形に整える
最初に取り組むべきは、商品ページの見直しである。価格、納期、対応地域、返品条件、よくある質問を、ページ上ではっきり書いておく。利用者が会話の途中で重ねる細かい質問に、サイトの情報だけで答えられる状態が理想だ。
実務では、次の問いが役に立つ。自社の商品について、お客様が三回続けて質問したとき、どの回答もサイト内の文章で裏づけられるか。答えられない質問があれば、その部分が広告の取りこぼしになる。
少額の試験運用で、自社に合う会話の型を探る
広告の対象国に事業がある企業は、予算の一部を使って小さく試すとよい。全体の一割程度にとどめ、既存の検索広告との成果の違いを比べる。見るべき数字は、クリック数だけでなく、問い合わせや購入までの到達率と、一件あたりの獲得費用である。
日本の企業でも、豪州やシンガポールなどへ商品を売る越境販売や、訪日客向けの事業なら無関係ではない。日本での展開は未定でも、先に海外で得た知見は、いずれ来る国内展開の準備になる。
広告の効果を見る指標を、会話に合わせて組み替える
会話型の広告では、最後のクリックだけを評価すると実態を見誤る。途中の質問で広告に触れ、後日あらためて指名検索で訪れる利用者もいるからだ。広告に接した人の後日の行動まで追えるよう、計測の設計を見直しておきたい。
社内では、検索広告の担当者だけでなく、サイトの運営者や商品の担当者も交えて対応を決める。広告の成否が、広告文より情報の整備に左右される時代に入りつつあるためだ。